団結権獲得をめざし、自らの改革と改善に取り組もう

1.基 調

 自治体消防が発足してから、半世紀以上を経過しました。この間の政治・経済・社会の全領域における急激な変化のもとで、消防が担う責務も年を追うごとに増大し、多様化してきました。
 昨年は三宅島の噴火災害、鳥取県西部地震、芸予地震、東海豪雨をはじめ大雨や台風による災害も各地で発生し、各地域に甚大な被害をもたらしています。さらには、高速道路でのバスジャック事件、小学校での大量殺傷事件のような人命が簡単に奪われる痛ましい事件も相次いで発生しています。また、火災は減少傾向にあるものの、多数の死傷者が出た火災も発生しています。一方、救急救助業務等を含めた消防に対する需要は、増加の一途をたどっています。
 このような状況下、消防行政に対する住民の期待は強く、増大する需要と住民の期待に応えるために、消防体制の充実と強化がより一層求められています。
 2000年1月20日の消防庁告示、「消防力の基準」全面改正から1年が経過しました。各市町村では、自治省(当時)消防庁の求めにより、この新「基準」に基づき市町村ごとに定めた「基準」数値を含む「市町村消防施設整備計画実態調査」に応じて「計画」を提示したところです。今後、それぞれの市町村には、新「基準」がいう「当該市町村の区域における消防の責任を十分に果たすため」の消防力の整備をどう推進していくのかが問われています。
 2001年6月、政府は、2000年12月に出した新たな「行政改革大綱」、2001年3月の「公務員制度改革の大枠」を受けて、「公務員制度改革の基本設計」を示しました。しかし、ち消防職員の団結権問題については、何ら改革の方向が示されていません。ILO87号条約を批准している115カ国の中で、団結権を認めていないのは日本だけです。政府は、「経済活動のグローバル化」(「公務員制度改革の大枠」)と言いながら、自分たちに都合の良いところだけを声高に言っているに過ぎないことが証明されました。国際労働基準の適用は、民主主義の成熟度の高さを示すものであり、この分野でも、日本の権利後進国という寂しい現実があります
 今回、自治労と連携して取り組んだ「公務員制度改革」に対する「消防職員に団結権を求める署名」活動については、短い期間での活動にも関わらず、19,581人(提出に間に合わなかったものを含める21,073人)の消防職員の署名を集めることができました。今後の組織拡大に向けても、一つの展望を持つことができたと評価できます。
2001年6月12日、ILO総会の条約勧告適用委員会は、連合がILO条約に違反しているとして提起した、日本政府の一方的な公務員制度改革案づくりについて審議しました。同委員会のサピア議長は、日本政府と労組との対話促進を求め、以後の進捗状況について詳細な報告を行うよう日本政府に求めました。この議長報告は総会日程最終日の21日、総会の全体会議で採択されました 。
 消防職場の現状を見れば、多くの職場で上意下達の非民主的な職場環境の存在や一昼夜交替勤務(無賃金拘束時間の存在)という勤務実態、さらには公務災害も数多く発生している厳しい職場実態にあります。  全消協は、このような劣悪な労働条件・職場環境等からの脱却を求め、77年の結成以来、積極的に運動を展開しています。幾多の具体的な改善とともに、結成当初の36組織・2,500人から現在の175組織・11,000人へ成長してきました。しかし、私たち全消協がめざしている「明るく魅力ある消防職場づくりと消防職員自らの権利と生活向上、住民のための消防行政を確立する」という目的達成までには、なお多くの課題が山積しています。
 96年10月から消防職員委員会制度が導入され5年が経過しましたが、多くの未組織職場の旧態依然とした職場環境下では、この制度が十分に生かされているとは言えません。私たちは、委員会の運営実態や審議結果の具体化などについて検証を進めて法制上の団結権を展望しつつ、未組織職場の消防職員に、自主組織の結成と現存する制度としての委員会の活用・実効性向上を、今後も訴え続けていかなければなりません。  雇用と年金の連携のために発足した高齢者再任用制度は、当初、2001年4月からスタートすることになっていましたが、自治体によっては、条例化できない事態が発生しています。私たちの消防職場は、6年遅れの2007年4月から始まろうとしていますが、消防職場のみでの再任用の難しさを考えたとき、試行・受け入れ体制等の諸準備をする必要があります。全消協は、一部の自治体では条例化できていない実態を踏まえ、自治労との連携を強めながら、実効ある制度の確立に向けて努めていきます。
 21世紀が幕を開けました。全消協は、成長を遂げている組織力と蓄積された運動の実績をもってさらに飛躍しなければなりません。そのために、全消協は次の課題を重点に掲げ、運動の強化と拡大を進めていきます。
 第1に、団結権獲得に向け、連合・自治労との連携をさらに強化します。
 第2に、消防職員委員会制度の民主的運営に取り組み、実効性を確立します。
 第3に、未組織消防職員の自主組織づくりを支援し、3万人体制の早期実現をめざします。
 第4に、会員の交流・参画を通じて、魅力ある全消協づくりと組織強化を推し進めます。
 第5に、労働条件、職場環境の改善に向けた取り組みを推し進めます。
 第6に、地域住民と連携し、消防職員の提言による消防行政の改善を推し進めます。

2.消防職員をとりまく情勢と活動の基本的方向

(1)消防職員の団結権問題については、当面の対応策として、95年に消防組織法の一部が改正され、全国すべての消防本部に「消防職員委員会」制度が設置されました。
 全消協は、消防職員委員会制度を団結権獲得への過渡的な措置として受け止め、制度の活用を進めてきましたが、運営方法や制度的に多くの問題が生じています。
 日本政府は、95年のILO総会の場において「消防職員の団結権に関しては、更に近い将来において関係者間で論議されるものと考えます。」と表明しています。
 また、2001年6月のILO総会では「消防職員委員会制度を導入し、消防職員の勤務条件改善に十分機能している」と述べています。これに対し、日本の労働側代表は「消防職員委員会制度は設けられたものの団結権がいまだに否認されていることには変わりはない」と反論しました。
 全消協は、日本の消防職員の団結権問題を前進させるために、国際的世論に働きかけるべく、消防職員委員会制度の運営状況についての調査結果をILOへ報告しつつ、国内世論の形成、また、全消協組織の拡大へと、組織的な活動を進めなければなりません。
 公務員制度改革については、政府が2000年12月1日に新たな「行政改革大綱」を明らかにした頃を前後し、「一般の公務員について、身分保障を廃止し労働三権を付与する。消防職員・警察職員等については、引き続き身分保障を残し、労働基本権もこれまでどおり否認する」といった点を含む内容で「政府が公務員制度を改革することを決めた」旨の報道が相次ぎ、これらにより、全国の消防職場では少なからぬ混乱が起きました。実際には「行政改革大綱」や2001年3月の「公務員制度改革の大枠」には消防職員の労働基本権についての記述はありませんでした。
 全消協は、これらの事態を重視し、幹事会や集会で議論を重ね、「消防職員に団結権を求める署名」活動を行ってきました。今後も、政府に対する団結権付与の要求を堅持し、連合・自治労と連携し、国内や国外への働きかけと合わせ、国民のコンセンサスが得られるよう積極的に取り組まなければなりません。

(2)全消協は、現在、消防職員委員会制度を、快適な職場環境の実現、安全や健康の確保、労働条件の改善など、安全衛生委員会とともに、消防職場の問題解決の場として重要な機関と位置付け、この制度を十分に活用するための取り組みを進めてきています。
 しかし、全国の消防本部には、未だに制度を理解しない管理者も多く、非民主的な運営がなされているケースも見受けられます。  全消協では、消防職員委員会の運営実態について、加盟組織を対象に毎年調査を行っていますが、全消防本部を調査対象とした、自治省(現・総務省)消防庁の調査結果と比較した場合、全消協加盟組織の消防本部の委員会では、職員側に最も有利な「実施が適当」とされた審議結果の割合が高いことが明らかになっており、民主的な運営の広がりと実効性の向上をさらに進める必要があります。この結果は、消防職員委員会制度の有効活用のためには、自主組織が必要であるということを、改めて確認させるものですが、審議結果を具体化させる拘束力がないことなど、制度的問題点も表面化しています。
この消防職員委員会の制度的問題と、調査結果を集約するため、さらに全国の多くの消防職場に対して、制度の活用を促し、その実態について調査を実施し、全消協として評価を下す必要があります。

(3)全消協は、77年8月、長崎市の出島会館において結成され、全国の消防職員の生活と権利の向上、自主組織運動の相互交流、明るい魅力ある職場づくり、消防行政の改善、団結権の獲得をめざしています。また、全ての消防職員が、自立した活動ができるための支援や連帯の輪を拡げるための運動を行っている組織です。 結成当初は36組織・2,500 人にすぎませんでしたが、「職場で様々な問題を抱えている全国の消防職場の仲間に、私たち全消協とともに行動を起こしてほしい」と20数年間運動してきた結果、現在では 175組織・11,000人を超える組織になってきました 特に、結成当初からの課題である団結権の獲得のために、ともに行動する仲間を一人でも多く結集させ、当面の目標である3万人体制を早期に実現し、問題解決への国内世論形成への原動力とするため、組織拡大への取り組みを積極的に行っているところです。
 その取り組みの一つとして、団結権問題解決へのステップとして位置づけている消防職員委員会制度を活用しきるためには、未組織職場に自主組織(消防職員協議会)結成が必要と訴えてきました。
 その結果、この2年間では12組織467名の組織拡大となっています。全消協が年に1回開催している組織強化拡大対策委員会でも、組織拡大のための有効な手段について議論しており、さらに地域に合致したきめ細かな運動が必要です。 また、2001年5月の研究集会で確認、実施した「消防職員に団結権を求める署名」活動を通じては、未組織の多くの消防職場で消防職員委員会の機能が十分果たされていないこと、また、全国にある消防職員協議会の存在を知らない消防職員がまだ多く存在することも、改めて認識させられました。全国の消防職員に全消協の存在を示すため、現在、全消協版「組織拡大リーフレット」を作成中です。 組織拡大には、自治労の協力が不可欠です。全消協幹事会は、自治労主催の「消防セミナー」と「消防対策県本部・重点単組担当者会議」に参加し、未組織消防職場での消防職員委員会制度の点検や、組織拡大への協力を要請してきました。そして、自治労の大きなバックアップを得ながら、さまざまな活動を行ってきました。 一方、「全労連・自治労連」は、97年5月「全国消防職員ネットワークの会」を結成しました。 全消協に参画している1万余の会員自らが力と知恵を結集させ、自治労との連携のもと未組織職場へ呼びかけ、消防職員が主体的に行動できる自主組織を結成することが、働きがいのある職場づくりにつながるものと考えます。

(4)組織拡大とともに重要な課題は組織強化です。
 組織が拡大しても全消協自身に力強い運動を進めていく体制がなければ、消防協運動への魅力が失われることになります。  今後さらに全消協が発展し、永年の課題である団結権の獲得をめざして活動を行っていくためには、組織拡大とともに単協自身が社会情勢を十分に認識しながら、住民に密着し、信頼される組織に変わっていくことが重要となっています。
 また、全消協活動は、団結権を獲得することのみが目標ではありません。団結権獲得後の全消協の活動も視野に入れながら、活動しなければなりません。 全消協は、会員の力と知恵を結集することによって、活力を得られる組織であり、さらなる飛躍を求めて行くためには、人的資源を生かした魅力ある組織づくりが不可欠です。このためには、会員自らが組織に参画していくという意識を持ち、運動を通じての交流で、問題を共有することから生まれる連帯感を組織の強化へとつなげることが重要です。
 また、社会の急激な変化を鋭敏に察知し、総合的な運動が展開できるよう組織の改革と充実をはかり、力強い活動ができるような環境整備に努める必要があります。

(5)労働時間や賃金は、労働者として最も基本的な問題です。 消防はその業務の性格上、24時間フルタイムにサービスを提供することが社会的にも要請されていることから、全国ほとんどの職場で一昼夜交替勤務制が採用されています。 この勤務制は、消防職員の団結権が否認されつづけ、労働基準法の重要な部分である休憩時間の基本原則が適応除外されていること、休憩時間に上限設定がないということといった条件のもとで、成り立っています。 全消協は消防職場の労働時間制に関する実態調査から 、
・ 長時間の無賃金拘束が存在する勤務制
・ 変形労働時間制の期間を無視した勤務サイクル
・ 制度を無視した振替制の濫用 などの職場実態を明らかにしてきました。 そして、この結果をもとに、無賃金拘束時間の解消に向けて、隔日勤務制から脱却することの必要性、深夜を含む労働の総量規制の新設を求めることなどの運動課題についての提起を行ってきました。
 同時に、自治労を通じて、総務省消防庁に対し、これらの矛盾について訴えながら、消防の労働時間制のあり方についての検討や、事例の紹介なども行ってきました。 このように、消防職場には休憩時間や勤務制に関わる多くの問題を抱えているものの、現行の法規制を改正する動きは依然としてノ慢であり、その歩調が早まる動きは、現在の社会情勢から判断しても、当分望めそうにありません。 法改正を待つのではなく、無賃金拘束時間の労働時間性を高めたうえで拘束時間が実働時間であるという主張をし、隔日勤務制からの脱却をするなど、地域に応じ、別の交替勤務制を模索する運動が各地で展開されています。
 私たちは、消防職場における労働時間短縮の運動について、無賃金拘束時間の短縮を実現し、時短の推進、諸休暇・休業制度などの諸権利行使が実質保障される職場環境を確立することが必要となります。  賃金の問題点では、行政職給料表を採用している消防職場では、職務の特殊性という理由から、他の行政職に比べ1〜2号の初任給上位格付けがなされているところも存在しています。しかし、このようなところでも、昇格運用制度が不十分であったり、厳然とした階級制度があるために将来にわたってその保障が得られていません。 また、組合消防組織においては、構成自治体の違いによる職員の身分の違いや賃金格差も存在し、消防職員の賃金について、消防業務の特殊性を考慮した基本賃金のあり方、中途採用者の前歴換算・年齢別最低保障制度などを含め、昇給・昇格について研究を進めていく必要があります。
 このようなことに加えて、現在推し進められている、政府による「公務員制度改革」の中で、国家公務員の賃金・労働条件決定に関する諸制度が一方的に変化させられるならば、一般の地方公務員、さらには消防職員への影響は必至だと言わざるを得ません。ですから私たちは、連合や自治労と連携して、私たちの求める民主的な公務員制度、労働条件決定制度を実現させていく必要があります。

(6)満額年金支給開始年齢の引き上げ措置と高齢者再任用制度の導入は、日本の人口構造が急激な勢いで、少子・高齢化へと進行し、また、年金財政が逼迫するなかで、高齢者の高い就労意欲と知識や経験を活かすことによって、希望すれば65歳まで働けるような社会に切り替え、活力ある社会構造を維持・発展させるためのものでした。 つまり、年金制度を、雇用と年金との連携をはかりながら、雇用促進的な仕組みに改めたうえで、共済年金制度を長期的に安定させるため、給付と負担の均衡をはかろうとするものです。
消防職場では、年金の支給年齢の引き上げが6年遅く(消防司令以下、司令長以上は一般行政職と同じ扱い)なるものの、制度発足と同時に試行、受け入れ体制を確立していかなければなりません。しかし消防における組織や職域、業務等の実態から再任用制度導入に対して多くの問題を抱えています。 全消協では、災害現場で活動することが大半を占める消防職場において、65歳まで第一線の災害現場で活動することが可能なのか、高齢職員が従事できる職種にはどのようなものがあるか、他の職種への配置転換は可能なのか、などといった課題について検討を重ね、2001年の制度発足と同時に、消防職場における受け入れ体制を確立するための運動を展開してきました。各地において、関係団体・部門との間で、交流再任用についての準備や消防職員委員会等を通じ、プロジェクトをつくるなどの取り組みを行い、制度を円滑に運営できるよう準備をしているところもあります。
 高齢者再任用制度を円滑に活用するといった域にとどまらず、年金制度改変の動向などに関して、より多くの情報をいち早く収集し、以後において適切に対応できるための研究が必要とされます。

(7)消防職員の公務中における死者や負傷者の発生する割合は、その職務の特殊性から、他の職場と比較して高くなっています。
 最近では、全消協の労働安全の確保を求める取り組みなどにより、公務災害の発生も減少傾向にあります。しかし、その比率は災害出動とともに救助訓練等、訓練時におけるものが、約30%と依然高い数字を示しています。そうした中、救急出動中の交通事故で搬送中の傷病者が車外に投げ出されるといった事故や、救急車内の酸素ボンベによる爆発事故、また、訓練中に梯子車が転倒する等の事故も発生しています。このように、職員の安全意識や安全を守る装備・施設は決して十分なものとはいえません。 さらに、全消協の2001年度基本調査によると、安全と衛生に関する条例・規則はあるものの、十分に機能していない職場が多く見られます。私たちの「いのちと健康」を守るためには、執務環境や生活環境のみならず、訓練内容や現場活動の実態を再点検し、安全・健康対策の具体的な改善と実現を求めていく必要があります。そのためには、安全衛生委員会を活用した運動に取り組む必要があり、また委員会の設置が法定化されていない職場においても、安全衛生推進者を中心とする安全衛生対策協議会を設置するなどの積極的な取り組みが求められます。
 一方、近年の社会構造の変革は、当然のことながら消防業務の活動内容にも影響を与えています。また、最近は、過去に類を見ない凶悪な犯罪なども数多く発生し、人々の多くが心にストレスを抱えているといえます。そうした中、消防職場においても、ストレスからくる心筋梗塞などの循環器系の疾患、脳出血などの脳血管障害のほか、業務に起因する自殺者もここ数年間に複数件発生しています。労働安全衛生活動の中でも、環境整備だけではなく、CIS(非常事態ストレス)対策などのカウンセリング体制の充実も求められます。  最近、各地で女性消防職員も多くなっています。執務環境についても、今までのように男性を中心とした整備だけでは不十分です。男女がともに協力し合い、消防業務の質を高めていくとともに、性別を考慮した施設整備が必要です。
 また24時間拘束勤務という特殊性等を考えたときに、食事の確保は重要と考えます。今後も、自治労の本部・県本部・単組とも連携しながら、政府・自治体当局との協議なども強めつつ、食事の取り方に関する事項の改善を含め、執務環境の改善をはかっていく必要があります。
 このように、私たちの消防職場には、消防活動や日常業務上での職員の安全と、心と体の健康をいかに守っていくのか、職場の環境改善をいかにして実施していくのか、といった労働安全衛生に関する課題が数多く存在しています。
 したがって、全ての消防職員が「いのちと健康」を守ることができる職場環境作りのために、具体的な対策の提起と実現を求める運動を展開していく必要があります。

(8)消防救急は、市民生活に密着したサービス行政として定着しています。
 2000年中の全国の救急出場件数は、3,930,024件 搬送人員は3,759,996人と、増加傾向が続いています。  救急需要が増加の一途をたどる背景には、日本の年齢構成が関係していると考えられます。 2015年には4人に1人が65歳以上の高齢者に到達すると予測され、加えて現在の少子化傾向が高齢社会化に一層の拍車をかける状況となっています。
 総務省消防庁の救急業務高度化推進委員会は、救急業務の高度化に関して検討し、本年その結果が提出され、諸問題が浮き彫りになりました。全国的な救急業務の実態は、特に指示医師との連携や、医療機関での再教育、活動後の検証など地域による温度差が生じているのが現状です。全国的に同じレベルでメディカルコントロール体制の整備が望まれますが、その体制整備は各消防本部に任されているのが現状です。この問題を解決するには、医療機関、地域医師会等との連携なくしては解決できません。
 近年、精神科救急の事案の中で、自傷他害の可能性がある傷病者の受け入れ体制を含め、精神保健指定医の24時間カバーや、搬送に際して保健所、警察との連携など、総合的な精神科救急医療体制の充実強化が求められています。
 救急医療は、傷病者の搬送と診療とを単純に分割できるものではなく、発症現場から医療が開始されることが最も望ましい姿です。現行の日本の医療制度の中では、その実現をはかることは極めて不可能に近い状況であることから、救急医療充実のために、救急救命士制度が導入され、消防が行っている救急業務が、救急医療体制を支える重要な部分とされるようになってきたわけです。しかし、都市部における急激な高度化に比べ、本来医療機関までの搬送に時間を要し、この制度が発揮されるであろう都市部以外の地域で高度化が進まないのが実態です。
 全消協としても、現在の救急医療体制の問題点を提起しながら、当制度の有機的な運用をはかるべく、救急隊員の質的向上をめざして隊員の専従化、これに伴う人員確保、指示医師の確保、脆弱な消防財政の問題といった救急医療を取り巻く環境整備について、関係各省庁に対して働きかけを行ってきましたが、救急救命士や標準課程・・課程を修了し、有資格者は充足していても勤務する消防職員の絶対数が足りず、消防隊員と兼任して車両を乗り換えるなど、専従率は低迷を続けています。さらに、隊員研修期間の長期化による慢性的な人員不足が問題となっています。
 救命率の向上は、バイスタンダーの応急手当が必要であり、地域住民に対する救命講習会など普及啓発活動の推進が必要と報告されています。  傷病者の発生から医療機関に引き継ぐ部門(プレホスピタル・ケア)を受け持つ、私たち消防救急の果たす役割が広く、大きく求められている現状の中で、救急医療体制の充実に向けて、組織的な取り組みがさらに重要となっています。

(9)自治体消防は、70年代に入ってから、自治省(現・総務省)消防庁の指導により、単独で消防本部を持てないところに事務組合方式及び広域連合の消防本部を数多く設置することで、常備化が急速に進められてきました。これにより、消防白書によると山間部や離島にある町村の一部を除き、全国市町村の99.8%の住民が、消防行政のサービスを受けることが可能ニなりました。
 しかし、同時に消防行政の広域化・常備化は、制度・運営・人事・財政等において、様々な問題を生み出してきたことも否定することはできません。  このような状況のなかで、94年に動きだした消防の「広域再編計画」は、規模の小さな消防を、周辺の消防組織と再編しながら強化をはかることを目的としています。  総務省消防庁は、この広域再編計画は消防行政の効率性、すなわち「火災等の災害の頻度と消防に対する投資とが全体として均衡の採れる地域と規模に再編成する」としてとらえています。消防行政に、災害発生頻度とそれに対する投資とのバランスが必要であるとして、火災や救急などの災害事案が少ない市町村を、周辺自治体とセットした形で担わそうとしているのです。
 さらに、消防庁は、2001年3月には、一部事務組合や広域連合について「一般的に責任の明確性、意思決定の迅速性、人材確保等の観点から問題もあり」とし、小規模消防本部の広域再編については「最も効果的な方法は市町村合併、によることであると考えられ」、今後の広域再編にあたっては「市町村合併の推進との整合性」が必要であるとしています。 確かに、現行の事務組合方式を継続した広域再編化は、消防行政の内容がより見えにくくなり、住民との距離をより隔てるものといえます。小規模消防の対応力を強化するには、安易な広域再編では根本的解決にはなりません。しかし、必然性の有無を問わない市町村合併によってそれらが解決するとは考えられません。 組合・広域連合にしても、合併にしても、行政の広域化の是非は、住民の人口動向・生活圏・地形・交通等の事情による広域化の必要性の有無が明らかにされ、住民の自主的な意思に基づいて、判断される必要があります。また、現に存する広域消防にあっては、各構成自治体の消防責任を明確にさせた上で、消防の業務内容や実態を住民に公表するなど、透明性を向上させる必要があります。  全消協では、90年5月のILO「消防職員の雇用および労働条件に関する合同会議」の結論である「消防事業はその他の公共サービスと同様に……経費削減によって地域社会全体、あるいは一部から必要な保護を奪ったり、また、あまりに広範囲を担当しすぎたり、人員が少なすぎたりして、消防士自身の生命をより大きな危険に置くようなことがあってはならない。」との指摘を基本に、消防庁に対して、
・広域再編を進めるにあたっては、不必要な広域化は進めるべきでないこと
・住民サービスが現状より低下しないこと
・職員の削減や労働条件の悪化を伴わないこと といった事項について、自治労を通じ、申し入れを行ってきました。
 これらの情勢を十分に認識したうえで、消防行政を担う私たち消防職員自身が、社会的使命を実感でき、しかも働きがいのある消防職場にさせていくという観点にも立って、消防の広域化問題に、主体的に対応していく必要があります。

(10) 住民ニーズの変化により消防行政には、火災・救急・救助といった従来の災害対応型の活動内容に加えて、よりきめの細かい、効率の良いサービスが求められるようになってきました。 消防機関は、24時間フルタイム稼動の体制を活かし、住民のもっとも身近にあって、安全と安心を提供している唯一の行政機関です。地域に暮らす住民の安全の拠り所であり、急激に変化する社会情勢や住民ニーズの多様化に的確に対応できる機関として、従来の固定観念にとらわれない「地域安全・安心センター」構想を、全消協は94年度全国懇談会(現研究集会)において提起しその実現に取り組んできました。
「地域安全・安心センター」は、現行の消防力でできることを実施していくということだけにこだわらず、将来の消防行政の姿を考えるものです。地域の実情に応じ、福祉、保健・医療行政等との連携を強化しながら、総合的に情報やサービスを提供できる行政機関をめざしていくことが、住民に信頼される消防行政を進めていくためには必要です。

(11)阪神・淡路大震災の恐怖は、時間の経過とともに人々の記憶から薄れつつありますが、全消協は、消防力の充実とボランティア育成の継続を訴えていかなければなりません。 近年、多数の死傷者が発生する原子力災害、航空機墜落事故、大規模地震が発生しています。災害形態の多様化は、地域における潜在危険を増大させています。消防は、地域の総合防災機関として、災害における地域の潜在的危機を調査・予測し、その対応を関係機関と連携して進めるとともに、住民と対話を進める中で災害危険の情報を開示し、関係機関・地域住民とともに地域防災計画や各種警防計画を策定する必要があります。
 消防無線のデジタル化が導入されようとしていますが、大きな二つの問題があります。
一つは、現在考えられているシステムでは、消防が得た災害情報を消防組織で偏重活用する内容になっていることです。災害時に、一番不安になって、各種の情報を必要としているのは、被災住民です。収集した災害情報をリアルタイムで住民に提供できるシステムづくりが必要です。
二つめは、デジタル化への移行には、多額の費用を要することです。財政基盤の脆弱な小規模消防本部・組合消防本部等においては著しい負担が考えられるため積極的な財政確保策を行うよう求めていく必要があります。また、多額の費用を要するデジタル化への移行を機に、さらなる消防広域再編につなげる動きも聞こえてきています。 消防力の整備にあたっては、「消防力の基準」が40年ぶりに全面改正されました。その内容は、地方分権を背景に、新基準を指針として各市町村自らが適正な規模の消防力を定め、自主的な判断によって整備すべきというものです。したがって、当該市町村が自らの自治体の状況をどう判断するかによって大きく左右されることから、ますます地域住民のコンセンサスづくりの重要性が増しています。 大規模災害時の広域応援に派遣される消防本部は消防力をさいて派遣している現状があります。しかし、消防力の基準には広域応援のための整備はうたわれていません。また、被災した自治体は、災害対応とともに広域応援隊に対する対応も行わなければならず、長期にわたる場合は、そのかかる費用の財政措置についても検討していかなければなりません。
 全消協消防総合研究委員会は、昨年「消防職場のQ&A 賃金・労働時間編」を発刊しました。消防職場独自の「なぜ?」がまとめられており、運動の支援になると考えます。今後も、「労働安全衛生編」をはじめ消防に関する多種多様な問題の解説をQ&A方式のブックレットとして随時発刊していきます。また、公務員制度改革や消防職員委員会など消防行政に関わる諸問題の調査・研究も進めています。さらに、団結権獲得への方策づくりや、消防職場への市民の理解が深められるような研究成果をあげるために、消防に関係する学識経験者との交流が必要です。そのことが国政レベルなどでの消防職員への理解につながります。
このように、消防を取り巻く情勢がめまぐるしく変化する中、柔軟に対応できるよう運動を展開する必要があります。

3.具体的活動方針

(1)団結権の獲得

消防職員の処遇や消防行政のあり方などについて、全消協が消防長・全国消防長会などと意見交換ができるような環境づくりに努めます。
国会議員への働きかけを強化します。
国際公務労連(PSI)をはじめ、諸外国の消防労働組合との交流を通じ、国際支援の輪の拡大や世論形成をはかります。
各地においても、県・自治体・消防長会・地方議員などとの話し合いを進めます。
連合・自治労・公務員連絡会と連携を強化し、労働基本権を含む公務員制度改革の動向を注視します。
ILOに報告できるよう、未組織を含めて、これまでの消防職員委員会制度の実態を調査し集約します。

(2)消防職員委員会制度

委員会の民主的な運営を求めるとともに、問題点を抽出し、自治労を通じて、関係省庁・全国消防長会等へ働きかけます。
全消協発行の「消防職員委員会の手引き」を再読し、委員会制度の有効活用と、自主組織のない職場に制度の定着をはかります。
円滑な委員会運営のために、多くの単協会員を委員に選出します。
提出意見は連名にするなど、単協で意見を十分に集約し、効果的に提出し、審議する体制を整えます。
委員会の開催時期は、審議結果を予算に反映できるように求めます 。
全国各地(未組織消防職場を含む)の委員会活動状況を把握し、情報交流をはかるとともに、「審議対象外」とされた提出意見への対応策等、共通した課題に取り組みます。
委員会での審議結果を、消防当局だけでなく首長部局にも働きかけ、その実現を求めます。
単協と当局との話し合いの場を併存することを求めます。

(3)組織拡大

組織拡大のため次のような運動を提起します。
  全消協は、各県に全消協組織強化拡大対策委員を置き、全消協組織強化拡大対策委員会を開催します。
  全消協の中期的目標を全国消防職員の過半数に置き、各県に組織拡大行動委員会を設置し、全消協組織強化拡大対策委員のもとに具体的行動を推進し、当面3万人体制をめざします。
  全消協のコンセプトをより明確にし、広報紙・インターネット等により未組織職場へのアピールを強化します。
  全消協や各地域で開催される交流会、学習会、セミナー等への参加を未組織職場へ呼びかけます。
  消防職員委員会の実態把握を基本に、自主組織の必要性を未組織職場へ呼びかけます。
  空白県の解消のため、1県1組織の巨ャに向け重点未組織消防本部を選定し、さらに取り組みを強化します。
  全消協加盟が当面困難な職場については、全消協賛助会員制度を利用すること。
※賛助会員=自主組織結成の意志のある消防職員3名以上を単位として、全消協に登録、情報の提供、組織化にむけての援助が受けられる。年会費1人3,000円。
  全消協版組織拡大リーフレットを作成します。また、各単協は、未組織・未加入の消防職員を対象に、個別に組織拡大リーフレットとともに地域にあった広報物などを配布するよう取り組みます。
未組織職場の自治労市町村単組に対して、次のことを要請します。
  単組に消防職員組織化対策委員会等を設置し機能化すること。
  組合機関紙、各種ニュース等を消防職場に配布すること。
  単組が主催するスポーツ、レク活動に消防職員の参加を呼びかけること。
  自治労組織と協力関係にある消防職場、あるいは、自主組織の結成を終えているところは、全消協への加入をめざすこと。
  円滑な消防職員委員会の運営を促進するための消防職員への指導と、組織化を一本化して取り組むこと。
  組織化にあたっては、地方議員の支援体制を確立すること。
  自治労共済・労働金庫などの活用を推進すること。
自治労各県本部・地連に対して、次のことを要請します。
  消防対策委員会等の設置と機能強化をはかること。
県消協の結成などを含め、県内消防職場の情報収集等について積極的な取り組みを行うこと。
消防職員委員会の実態把握および円滑な運営のための県に対する窓口となること。
自治労の横断的組織とも連携強化をはかり、消防に関する情報提供と、組織化に対する支援を求めます。

(4)組織強化

定期総会は事業内容の実効性を高めるため、「活動方針提起総会」と「活動方針補強総会」に区分し、隔年ごとに開催します。
全国消防職員研究集会を開催し、労働条件や消防行政、職員委員会、女性消防職員の労働環境などの取り組みについて、会員相互の情報交換や交流の場とします。
労働講座については、全消協運動を進める上での基本的な学習の場と位置づけ、より適切な受講者層・プログラムにより引き続き複数回開催し、学習会への参加しやすい環境づくりに努めます 。
消防をとりまく社会情勢の変化及び高度情報化社会の進展に即応するため、広域行政問題・消防職員委員会・高齢者再任用問題・職場環境改善事例等、単協活動の参考となる情報の提供・収集など情報機能のあり方について検討を行い、情報機能の整備と強化をめざします。
組織規模、地域事情等により、各単協で共有できる問題について解決に向け情報交換を進めます。
ブロック連絡協議会は、各県消協・単協間の連絡調整等を行います。
県消協は、県下単協の活動の推進をはかります。その機能強化のため、引き続き会費納入の一割還元を継続します。
新規加盟単協については、組織拡大委員が中心となって定期的に相談を受ける機会を設けるなどのフォローを行います。また、新規加盟単協の全消協加盟時の会費納入については、6ヵ月の猶予期間をおくこととします。
単協の組織強化をはかるために、各単協は、次の取り組みを行います。
  未加入者や新規採用者の組織加入を積極的に行い、組織の強化に努めます。
  これからの時代を担う活動家の人材育成をしながら、幅広く各世代からの意見収集を行い、社会変化に対応できる組織づくりに努めます。
  他の消防の仲間、自治労、関係団体との日常交流、情報交換を行い、積極的に学習会の開催、参加をします。
  消防行政問題や職場環境改善について研究し、問題点について消防当局とルールのある話し合いを確立する事で単協の強化を促進するとともに、消防職員委員会の適正な運用を促します。
  住民に対して、協議会活動について理解を広めるための活動を行います。
  全消協主催の労働講座、研究集会などに積極的に参加し、活動家を養成します。
  充実した活動を支えるため、安定した財政基盤の確立を求めます。


(5)労働条件・職場環境の改善

 <労働時間>

休憩時間特例のある現状をふまえ、無賃金拘束時間を解消するため、当面次の取り組みを強化します。
  無賃金拘束時間を可能な限り短縮すること。
  週休2日及び諸権利行使が保障されるよう職員定数の増加をはかること。
  変形労働時間制の期間として、「1ヶ月以内」を遵守すること。また、週休日を割り振る基準として「4週間」を原則とし、使用者により恣意的に週休日の振替運用がされているところは是正を求めること。
 

労働時間配分の明確化をはかり、休憩時間内の労働(出動など)に対して超過勤務手当の支払いを求めること。
  休憩時間に係る基本原則適用除外を定める労基則の見直しを求めるとともに、深夜を含む労働の総量と深夜勤務の回数規制を設けること。
非番・週休日などの勤務時間外における恒常的・定期的な業務命令(予防査察・救命講習・訓練など)を撤廃し、適正な人員配置を行い、通常勤務の中でこれらの業務がスムーズに遂行できる体制を求めます。
勤務形態・労働時間の改善事例を収集し,各単協へのフィードバックに努めます 。
諸休暇を取得する権利が制限されないようにします。


 <賃金の改善>

非番・週休日などのやむを得ない勤務従事には、身体的に拘束する全時間を対象に、超過勤務手当の支払いを求めます。
消防職員の給与実態について引き続き調査を実施し、基本賃金、ならびに諸手当のあり方についてさらに研究を進めます。
組合消防内における賃金格差解消をめざし、積極的に構成市町村での情報交換を行い、消防職員委員会等を通じ、高水準の自治体の賃金に準ずるよう改善に取り組みます。
  同一自治体職場での一般行政職員との賃金格差が生じないよう積極的に情報交換を行い、昇給・昇格制度の整備に努めます。
賃金・諸手当の改善事例を収集し、その情報の提供に努めます。

 <高齢者再任用制度の確立>

該当者にアンケートを実施するなど、制度化に必要な基礎的データを整理するよう求めます。
関係団体・部門と協議し、再任用・再雇用を希望する者全員が働くことができるよう職域・職場の確保に向けて取り組みます。
希望者が就労意欲を損なうことなく、安心して働き続けられる環境づくりに取り組みます。
各自治体における条例、運用内容等の情報交換をし、実態の把握に努めます。
消防職員委員会等を通じ、プロジェクトをつくるなど円滑に運営できるよう万全の準備を進めます。


 <労働安全衛生対策>

消防業務を労働安全衛生法上、「安全管理者を選任すべき・安全委員会を設けるべき」等の業種として指定するよう求めます。
労働安全衛生法の趣旨をいかし、民主的で職員一人ひとりが積極的に参加できる安全衛生活動を推進します。
私たちが従事する現場活動には、あらゆる危険性が潜在しています。現場活動時の安全確保・健康確保をはかるため、消防当局に、必要な情報の提供、安全衛生教育の徹底、資機材の整備充実を求めます。また、開発された機械・器具が遅滞なく消防現場に導入されるよう求めます 。
各自治体における条例、運用内容等の情報交換をし、実態の把握に努めます。
業務中や業務に起因して発生したと思われる傷病等については、すべて公務災害認定請求を行うよう取り組みます。また、未組織職場での事故についても泣き寝入りに終わらせないよう働きかけます。
過労対策(循環器系疾患等)、メンタルヘルス問題への対策を強める必要がありますが、まず、職場で気軽に話し合える環境づくりを進めるとともに、すべての職員がメンタルヘルスに対する正しい知識を持ち、人権の尊重・プライバシー保護を基本に、労務管理・人事管理とは完全に切り離したカウンセリング体制の充実を求めます。
職員が療養する必要が生じた際に、安心して治療に専念できる体制づくりを求めます。また、職場復帰した際においても、就業場所や業務内容を変更するなど、職員の健康に配慮した体制づくりを求めます。
原子力施設立地地域等における、自治体消防本部の対応体制の充実、災害発生時に出動する消防職員の安全を確保する装備の充実、また、教育・訓練の徹底等を求めます。
女性消防職員の業務従事にあたっては、労基法・労安法などの遵守を求め、消防職場への女性の進出を制限することなく、現場活動における危険を取り除く対策や、母性保護を考慮した勤務配置をするなどの措置を求めます。
男女雇用機会均等法の趣旨をかんがみ、セクシャルハラスメントに関する学習会等の取り組みや、性別を考慮した施設の整備等を求めます。
消防職員が、24時間職場に拘束される中で、福利厚生の充実は必要不可欠です。そのため、食事環境の整備・仮眠室の個室化等を求めます。
全消協は、消防職場で労働安全衛生活動を推進するため、「自治体労働安全衛生研究会」の活動に参画しています。各会員が同研究会の活動に積極的に参加し、単協での活動に活かせるように取り組みます。

(6)消防行政の改善

 <救急業務の充実>

年々増加する住民からの救急要請に応えるため、救急隊員の専従化の推進、教育、研修機会の増加、住民に対する応急手当普及啓発が行えるよう、増員措置を求めます。
救急隊員の資質を向繧キるため医療機関への派遣研修などの充実をはかるよう求めます。なお、派遣にあたっては派遣先の労働条件との整合を十分に考慮した上で実施することを求めます。
救命処置の実施に際して、実施責任が隊員個人に問われることがないよう、消防当局に責任の所在を明らかにするような運動を進めます。
救急隊員の感染防止対策、ディスポ資器材の拡充、消毒室の設置、また救急車内での患者に対する感染防止対策の強化を求めます。
救急患者受け入れ体制、救急救命士への指示医師の確保、また、救急隊員研修への協力など医療機関との連携を強化するため、地域の医師会や医療連絡協議会などの機能を活かし、精神科救急医療体制をも含めた整備・強化を求めます。
地域医療計画や救急体制の抜本的な見直しのため、地域の医療関係者と連携をはかり、発症現場から社会復帰までの体系的整備(命のネットワーク)づくりについて研究をさらに進めます。
救急医療体制の制度改正について、一元化に伴う諸問題の解決に努めます。

 <広域再編対策>

消防本部の規模のみを判断材料とするのではなく、住民の生活圏・消防需要の動向・サービスの水準・住民の意思等が総合的に検討されるよう求めます。
人員削減を主たる目的に置くのではなく、あくまで住民の消防に対する行政需要と、市町村の消防責任との均衡をはかるよう求めます。
財政運営のあり方について調査を行い、実態把握に努めます。
署所の統廃合などにより住民に対する消防サービスの低下を招くことなく、総合的に向上するよう求めます。
住民の意思が消防行政に反映できるようなシステムづくりを求めます。
消防職員の身分・給与等処遇が不利益とならないよう取り組みます。
計画的職員採用、円滑な人事ローテーション、専門家の養成ができる職員規模、必要資機材の購入ができる財政規模を有する組織を求めます。
自治体の主体性や、市民参加システムの制度化、設立目的、権限と財政負担の均衡などの観点から「広域連合制度」を導入した場合の検討を行います。
構成自治体の経費負担方法については、いわゆる6・4方式のような不適切なあり方ではなく地域住民に対する行政サービスと財政負担の均衡が取れるよう適切な措置を求めます。

 <地域安全・安心センター構想の推進>

「地域安全・安心センター」構想に関して、各地域の実情に応じた消防行政のあり方を、各単協で主体的に分析・検討します。
住民アンケート調査の集計によって得られたデータから、「今後、消防行政に何が期待されているのか」について、さらに分析・検討します。
会員をはじめ各方面から、消防行政の将来展望について幅広い議論の素材の提供を求めます。
具体的行政実例を収集し、分析・検討を行うとともに、その情報を提供し、各地域での議論の活性化に努めます。
「地域安全・安心センター」構想と「高齢者再任用制度」、「広域再編問題」の接点について検討します
医療・福祉・保健・教育機関等、他の関係機関との連携について、さらに検討します。

 <時代に対応するシステム作り>

消防財政に関する調査・研究を進めます。
基準財政需要額の算定方法について、地域の実情を反映するシステムを構築するとともに、簡素化をはかるよう求めます。
国庫補助金等に関する過重手続きを解消するため、申請・交付・報告等の手続きについて、簡素化・迅速化をはかるよう求めます。
予防行政の積極的推進のため、予防担当職員の研修・育成の充実をはかるよう求めます。
大規模災害の発生に備え、各自治体で地域防災計画の見直しが行われ、消防においても広域応援体制の整備などが推進されています。私たちは、視点を変え、「災害に強い人づくり」を進めるため、行政として何をなすべきか、その担うべき役割などについて研究します。
デジタル化について、導入に伴う費用にかかる財政支援を求めます。
各単協においても、地域の実情に沿った消防行政の確立にむけ、次のことに取り組みます。
  地域の消防行政について、各県自治労・自治研センターとともに、行財政の問題点の調査・分析など、地方自治・行財政の研究活動を進めます。
  地域の防災計画、消防行政の改善のため、住民や有識者を中心としたシンポジウムの開催を計画するなど、世論の喚起に努めます。
  各地域の消防責任を果たすための消防力体制を研究します。
広域応援に関する諸規定が「消防力の基準」にうたわれていない矛盾点を指摘し、財政面も含めた広域応援体制のあり方を検討します。
消防総合研究委員会は消防にヨわる各種の問題を調査・研究します
  消防総合研究委員会の研究委員は、全国からの幅広い人材で構成します。
  「消防職場のQ&A 労働安全衛生編」を発刊するとともに、消防に関する多種多様な問題を随時出版物等にまとめていきます。
  公務員制度改革などの情勢、法令や消防職員委員会等の研究を進めます。
  各種の講座・集会に講師を派遣します。 オ 消防に関係する学識経験者との交流を深めます。
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