消防機関は、地域社会において「火災をはじめとする各種災害や事故から住民の生命と財産を守る」という重要な行政サービスを担っています。本年1月の阪神・淡路大震災や3月の東京におけるサリン等の事件などの発生に見られるように、消防機関が対応する災害や事故の多種多様化が進んでいます。このような現状の中で、国民の安全や安心を求めるニーズは改めて高まっており、消防行政の充実とそのサービスの向上が求められています。今後、より一層の消防行政と業務の拡大充実をめざすことは勿論のこと、そこに働く消防職員の勤務条件・勤務環境の改善と向上にも取り組んでいくことが求められています。
消防職場では、一労働日24時間拘束という長時間拘束勤務が存在しており、災害や事故などに迅速に対応するという緊張性に満ちた職場環境にあります。そこに働く消防職員は、全体的に高齢化が進んでおり、健康障害への不安や多種多様化する災害や事故対応への安全策など、それぞれの地域でさまざまな問題を抱えています。その対策のためには、消防職員の増員をはかり、現行の24時間拘束勤務・隔日交替勤務からの脱却という大きな改革・改善から、健康と安全性の増進、日常の職場環境整備に至るまでの具体的な幅広い改善が求められています。
全国消防職員協議会に加盟する消防職場では、それぞれの職場において安全衛生委員会などの活動により、多くの職場改善が実務的かつ具体的に行われてきています。この改善事例集は、全国消防職員協議会、自治労安全衛生対策室と自治体労働安全衛生研究会が共同して実施した職場改善事例についての調査結果をふまえワークショップで論議し、発刊に至ったものです。
改善事例集では、消防職場にとって最良最善の改善だけにこだわることなく、ちょっとした創意
と工夫で改善できたもの、年次計画的に改善したものなど、改善した経緯も見られるように心がけたところです。全国の消防職場において、この改善事例集が参考となり、職場改善活動の経験交流が活発に行われ、職場改善活動がますます活性化することを期待します。
なお、刊行にあたって、多くの消防職場から調査のご協力と写真添付を含む情報提供をいただきました。改めて心から感謝を申し上げます。
第1章 明るく快適な職場環境をめざして |
<テーマ1> 事務所・会議室・司令室・受付室の改善 |
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●ゆとりある執務室と什器の充実
●明るく潤いのある職場
●健康ときれいな空気を職場に |
<テーマ2> 車庫・倉庫の改善 |
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●車庫の環境整備
●洗車・洗浄設備の充実
●収納・保管の工夫 |
<テーマ3> トレーニング室と訓練施設の改善 |
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●器材の整備とトレーニング方法の工夫
●高所訓練の安全対策 |
<テーマ4> 仮眠室・休憩室・食堂の改善 |
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●仮眠室改善の工夫
●仮眠室の個室化
●独立した休憩室
●食堂・厨房設備の充実 |
<テーマ5> 衛生設備の改善 |
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●使いやすく衛生的な手洗い・洗面設備
●浴室とトイレの改善 |
<テーマ6> ロッカーの供与 |
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●用途に応じた個人用ロッカーの供与 |
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第2章 安全で円滑な消防活動をめざして |
<テーマ1> 車両の改善 |
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●車両整備の改善
●三連梯子など車載方法の工夫
●地域特性に合った車両の導入
●車両用通信設備の充実
●救急車の改善 |
<テーマ2> 積載装備の改善 |
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●空気呼吸器・ホースなどの軽量化
●三連梯子の軽量化 |
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第3章 救急業務における安全衛生対策の向上をめざして |
<テーマ1> 緊急走行中の安全対策 |
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●安全な緊急走行と搬送対策 |
<テーマ2> 衛生対策の向上 |
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●よりよい日常の衛生対策
●ディスポーザブル用品導入による感染防止対策 |
<テーマ3> 消毒作業の充実と消毒室の設備 |
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●消毒作業の手順を考えた対策
●消毒、滅菌作業の充実を図る消毒室の設置 |
<テーマ4> 潜水業務の設置と改善 |
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●水難救助の充実
●水難救助用個人装備の充実 |
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第4章 個人装備・保護具の充実をめざして |
<テーマ1>個人装備・保護具の改善 |
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●空気呼吸器用の面体の個人貸与
●手袋・ヘルメットなど保護具の改善
●防火衣の改善など
●作業帽などの改善 |
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第5章 職場安全衛生活動の活性化をめざして |
<テーマ1>安全衛生活動 |
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●安全衛生委員会と職場巡回
●実践的な安全衛生研修 |
<テーマ2>地域住民との共同 |
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●地域住民とともに |