第68号

2004〜2005年度活動方針(案)

平和で安全・安心な社会をつくるために
 全消協は、8月25日に東京において第27回定期総会を開催します。2004〜2005年度にわたる活動方針を決定する総会となります。その主要部分を掲載しますので、各消協での検討をお願いします。
 


(1)公務員制度改革

1. 連合・自治労・公務員連絡会と連携を強化し、労働基本権の確立を前提とした公務員制度改革の実現にむけて取り組みを強化します。

(2)消防職員委員会制度

1. 全消協発行の「消防職員委員会の手引き」を広く配布し、委員会制度の有効活用と、自主組織のない職場に制度の定着をはかります。
2. 円滑な委員会運営のため、多くの単協会員を委員に選出します。
3. 会員の意見を集約し、効果的に提出し、審議する体制を整えます。
4. 委員会の開催時期は、審議結果を予算に反映できるよう求めます。
5. 全消防本部の委員会活動状況を把握し、情報交流をはかるとともに、「審議対象外」とされた提出意見への対応策など共通した課題に取り組みます。
6. 委員会での審議結果を、消防当局だけでなく単組などを通じ首長部局にも働きかけ、その実現を求めます。

(3)団結権の獲得

1. 消防職員の処遇や消防行政のあり方などについて、全消協が消防庁・全国消防長会などと意見交換できるような環境づくりに努めます。
2. PSI(国際公務労連)をはじめ、諸外国の消防労働組合との交流を通じ、国際支援の輪の拡大や世論形成をはかります。
3.「民主党消防政策議員懇談会」をはじめとする国会議員に対して、問題意識の共有化と法改正にむけた取り組みをはかるよう働きかけを強化します。
4.各地においても、県・自治体・消防長会・地方議員などとの話し合いを進めます。
5.連合・自治労・公務員連絡会と連携をさらに強化します。
6.ILOに報告できるよう、未組織を含めて、これまでの消防職員委員会制度の実態を継続して調査します。

(4)組織拡大

1. 組織強化拡大5ヵ年計画に基づき、次のことに取り組みます。
ア 全消協は、各県に全消協全国組織強化拡大対策委員を置き、年1回組織強化拡大対策委員会を開催します。
イ 各県単位においては、2カ月に1回組織強化拡大対策委員会を開催し、自治労県本部の消防対策担当者とともに、組織化にむけた取り組みを検証し、具体的対応の強化をはかります。
ウ 全消協の中期的目標として全国消防職員の過半数に置き、各県に組織強化拡大対策委員会を設置し、組織強化拡大アクションプログラムに基づき、組織強化拡大対策委員のもとに具体的行動を推進し、当面3万人体制をめざします。
エ 全消協のコンセプトをより明確にし、広報紙・インターネットなどを通じて未組織職場へのアピールを強化します。
オ 未組織職場に対して、全消協や各地域で開催される交流会、学習会、セミナーへの参加を呼びかけます。
カ 消防職員委員会の運営実態に関する調査を継続し、自主組織の必要性を未組織職場へ呼びかけます。
キ 1県1組織のところについては、全消協幹事、組織強化拡大対策委員が組織化にむけた取り組みを推進します。
ク 各単協が未組織・未加入の消防職員を対象として、個別に組織拡大リーフレットとともに地域にあった広報物などの配布ができるよう推進します。
ケ 政令指定都市については、自治労の大都市共闘に消防職員の組織化に関する集会・会合を開催するよう働きかけます。
コ 毎年組織強化拡大5ヵ年計画の実施状況について検証を行います。
2. 未組織職場の自治労市町村単組に対して、次のことを要請します。
ア 単組に消防職員組織化対策委員会などを設置し機能化すること。
イ 組合機関紙、各種ニュースなどを消防職場に配布すること。
ウ 単組が主催するスポーツ、レク活動に消防職員の参加を呼びかけること。
エ 自治労組織と協力関係にある消防職場、あるいは、自主組織を結成しているところは、全消協への加入をめざすこと。
オ 円滑な消防職員委員会の運営を促進するための消防職員への指導と、組織化を一本化して取り組むこと。
3. 自治労各県本部・地連に対して、次のことを要請します。
ア 消防対策委員会などの設置と機能強化をはかること。
イ 県消協の結成などを含め、県内消防職場の情報収集などについて積極的な取り組みを行うこと。
ウ 消防職員委員会の実態把握および円滑な運営のための県に対する窓口となること。
4. 市町村合併の対応をはかるため、次のことに取り組みます。
ア「市町村合併組織対策対象消防本部」の未組織消防職員に対して、組織化による当局への影響力をアピールし、100%組織化にむけて取り組みます。
イ 市町村合併に関する現状把握と今後の効果的な対応をはかるため、市町村合併調査を行います。
ウ 市町村合併の対象となる消防本部の賃金労働条件や人員資機材に関する情報収集を行い、自治労各県本部市町村合併対策委員会の取り組みに参画できるよう体制整備をはかります。

(5)組織強化

1. 定期総会は事業内容の実効性を高めるため、「活動方針提起総会」と「活動方針補強総会」に区分し、隔年ごとに開催します。
2. 全消協は、各県に全消協全国組織強化拡大対策委員を置き、年1回組織強化拡大対策委員会を開催します。
3. 各県単位においては、2カ月に1回組織強化拡大対策委員会を開催します。
4. 全国消防職員研究集会を開催し、労働条件や消防行政、消防職員委員会、女性消防職員の労働環境などの取り組みについて、会員相互の情報交換や交流の場とします。
5. 労働講座については、全消協運動を進める上での基本的な学習の場と位置づけ、より適切な受講者層・プログラムにより引き続き複数回開催し、学習会への参加しやすい環境づくりに努めます。
6. 消防を取り巻く社会情勢の変化および高度情報化社会の進展に即応するため、広域行政問題・消防職員委員会・高齢者再任用問題・職場環境改善事例など単協活動の参考となる情報の提供・収集など情報機能のあり方について検討を行い、情報機能の整備と強化をめざします。
7. 組織規模、地域事情などにより、各単協で共有できる問題について解決にむけ情報交換を進めます。
8. 県消協は、県下単協の活動の推進をはかります。その機能強化のため、引き続き交付金として会費納入の5%還元を継続します。
9. オルグ・組織対策費として、各県単位ごとの組織強化・拡大活動の最低保障金額10万円と交付金相当額の合計金額を上限として財政負担を行います。
10. 新規加盟単協については、組織拡大委員が中心となって定期的に相談を受ける機会を設けるなどのフォローを行います。また、新規加盟単協の全消協加盟時の会費納入については、6カ月の猶予期間をおくこととします。
単協の組織強化をはかるために、各単協は、次の取り組みを行います。
ア 未加入者や新規採用者の組織加入を積極的に行い、組織の強化に努めます。
イ これからの時代を担う活動家の人材育成をしながら、幅広く各世代からの意見収集を行い、社会変化に対応できる組織づくりに努めます。
ウ 消防行政問題や職場環境改善について研究し、問題点について消防当局とルールのある話し合いを確立することで単協の強化を促進するとともに、消防職員委員会の適正な運用を促します。
エ 住民に対して、協議会活動について理解を広めるための活動を行います。

(6)労働条件・職場環境の改善

〈労働時間など〉
1. 休憩時間特例のある現状をふまえ、無賃金拘束時間を解消するため、以下の取り組みを行います。
ア 全消協として次の取り組みを強化します。
 a 休憩時間に係る基本原則適用除外を定める労働基準法施行規則の見直しを求めるとともに、深夜を含む労働の総量と深夜勤務の回数規制を設けるよう求めます。
 b 消防職員の仮眠休憩時間の出動実態調査を実施します。
 c 調査結果については、加盟単協と逐一情報の共有化をはかれるよう努めます。
 d 自治労と連携して、自治労委員長と総務大臣との勤務条件等に関する定期協議などを通じた行政対策や民主党消防政策議員懇談会に対する課題提起と意見反映をはかるなど国会対策に取り組みます。
 e 消防職員委員会での審議結果を集約、総括します。
 f 仮眠休憩時間の出動実態調査結果、消防職員委員会での審議結果集約を踏まえ、自治労と連携・協議しながら人事委員会・公平委員会に対する措置要求、さらには司法対策をも視野に入れた支援協力体制の確立をはかります。
イ 各単協は次の取り組みを強化します。
 a 無賃金拘束時間を可能な限り短縮するよう求めます。
 b 週休2日および諸権利行使が保障されるよう職員定数の増加を求めます。
 c 変形労働時間制の期間として、「1カ月以内」を遵守すること。また、週休日を割り振る基準として「4週間」を原則とし、使用者による恣意的な週休の振替運用については是正を求めます。
 d 労働時間配分の明確化をはかり、休憩時間内の労働(出動など)に対して超過勤務手当の支払いを求めます。
 e 長時間拘束勤務に対する特殊勤務手当の支給を求めます。
 f シフト制の導入等、隔日勤務制の改善をはかります。
 g 消防職員委員会に対して、消防職場の勤務条件の改善をはかることを求めて、意見の提出を実施します。
2. 時間外勤務の縮減を求めるとともに、恒常的なサービス残業に対しては、超過勤務手当が支給されるよう求めます。
3. 明番・週休日などの勤務時間外における恒常的・定期的な業務命令(予防査察・救命講習・訓練など)を撤廃し、適正な人員配置のもと、これらの業務が通常勤務のなかで円滑に遂行できる体制を求めます。
4. 勤務形態・労働時間の改善事例を収集し,各単協への情報提供に努めます。

〈賃金・労働条件の改善〉
1. 明番・週休日などのやむを得ない勤務従事には、身体的に拘束する全時間を対象に超過勤務手当の支払いを求めます。※(明番=当直などの番が終わること)
2. 組合消防内における賃金格差解消をめざして積極的に構成市町村での情報交換を行い、消防職員委員会などを通じ、高水準の自治体の賃金に準ずるよう改善に取り組みます。
3. 同一自治体職場での一般行政職員との賃金格差が生じないよう積極的に情報交換を行い、昇給・昇格制度の整備に努めます。
4. 賃金・諸手当の改善事例を収集し、その情報の提供に努めます。
5. 市町村合併による消防の広域再編に伴う労働条件については、関係自治労単組と緊密に連携して、新市町村建設計画に盛り込まれるよう求めます。一部事務組合職員の身分保障についても、不利益を被ることのないよう求めます。
6. 女性職員採用がさらに推進されるよう労働条件の整備を求めます。

〈高齢者再任用制度の確立〉
 全消協は、条例で運用されている自治体の情報の収集と共有化に努めます。また、制度の実効が上がるように次のような取り組みを求めます。
1. 該当者にアンケートを実施するなど制度化に必要な基礎的データを整理する。
2. 希望者全員の再任用にむけて関係団体・部門と協議し、職域の研究と拡大・職場の確保をはかる。
3. すでに運用が開始されている市町村部局での再任用について調査研究するとともに、問題点を把握することによって、自治体当局に対して再任用制度の円滑な運用の開始を求める。

〈労働安全衛生対策〉
1. 消防業務を労働安全衛生法(以下安衛法)上、「安全管理者を選任すべき・安全委員会を設けるべき」などの業種として指定するよう求めます。
2. 私達が従事する現場活動には、あらゆる危険性が潜在しています。現場活動時の安全確保・健康確保をはかるため、消防当局に必要な情報の提供、安全衛生教育の徹底、資機材の整備充実を求めます。また、開発された機械・器具が遅滞なく消防現場に導入されるよう求めます。
3. 業務中や業務に起因して発生したと思われる傷病などについては、すべて公務災害認定請求を行うよう取り組みます。また、未組織職場において発生したものについても、泣き寝入りに終らせないよう働きかけます。
4. メンタルヘルス問題に対応するため、まずは職場内で気軽に話し合える環境づくりを進めます。また、すべての職員がメンタルヘルスに対する正しい知識を持ち、人権の尊重・プライバシー保護を基本に、労務管理・人事管理とは完全に切り離したカウンセリング体制の充実を求めます。
5. 原子力施設立地地域などにおける消防本部の対応体制の充実、関係機関との情報の共有、災害発生時に出動する消防職員の安全を確保する装備の充実、また、教育・訓練の徹底などを求めます。
6. 女性消防職員の業務従事にあたっては、労働基準法・安衛法などの遵守を求め、かつ、消防職場への女性の進出を制限することなく、現場活動における危険を取り除く対策や母性保護を考慮した勤務配置をするなどの措置を求めます。
7. 男女雇用均等法および男女共同参画社会基本法の趣旨に基づき、セクシャルハラスメントに関する学習会などの取り組みや女性職員専用の浴室・便所・仮眠室・休養室・更衣室を設けるなど性別を考慮した施設の整備を求めます。
8. 消防職員が24時間職場に拘束されるなかで、福利厚生の充実は必要不可欠であるとの認識に立って、食事環境の整備・仮眠室の個室化やリラックスのできる休養室の整備などを求めます。
9. 各会員が「自治体労働安全衛生研究会」の活動に積極的に参加し、単協での活動に活かせるように取り組みます。

(7)消防行政の改善

〈救急業務の充実〉
1. 急増する住民からの救急ニーズに応えるため、救急救命士の養成、救急隊員の専従化の推進、度重なる出動に対して救急隊員交代、労務管理上の配慮、教育・研修機会の充実、住民に対する応急手当普及啓発などが行えるよう増員措置を求めます。
2. メディカル・コントロール体制を確立し、救急救命処置が行える体制づくりを求めます。
3. 新型感染症(SARSなど)や生物・化学兵器によるテロに備え、救急隊員の感染防護対策、ディスポーザブル資器材の拡充、消毒室の設置、また救急車内での患者に対する感染防護対策の充実・強化をはかり、感染傷病者搬送のための救急車の増強配備を強く求めます。
4. 精神科救急医療や周産期・小児科救急医療体制の充実を含めた整備・強化を求めます。
5. 地域医療計画や救急体制の抜本的な見直しのため、地域の医療関係者と連携をはかり、発症現場から社会復帰までの体系的整備(命のネットワーク)づくりについて研究を進めます。

〈広域再編対策〉
1. 広域再編にあたっては、次のことを求めます。
ア 消防本部の規模のみを判断材料とするのではなく、住民の生活圏・消防需要の動向・サービスの水準・住民の意思などを総合的に検討すること。
イ 人員および財政の削減を主たる目的に置くのではなく、あくまで住民の消防に対する行政需要と市町村の消防責任との均衡をはかること。
ウ 防災対策について消防機関と関係市町村との密接な連携強化策を講じること。
エ 計画的職員採用、円滑な人事ローテーション、専門家の養成ができる職員規模、必要資機材の購入ができる財政規模を有する組織であること。
オ 構成自治体の経費負担方法については、いわゆる6・4方式のような不適切なあり方ではなく地域住民に対する行政サービスと財政負担の均衡が取れるよう適切な措置を講ずること。
カ 消防職員の身分・賃金など処遇が不利益とならないようにすること。
2. 社会的対話を通じて住民の意思が消防行政に反映できるようなシステムづくりを求めます。
3. 法定および任意合併協議会が設置されている地域の単協は、早急に地域実情にあった消防行政サービスのあり方について研究し、自治労県本部・単組と連携して専門部会に政策要求を行います。
4. 自治体の主体性や、住民参加システムの制度化、設立目的、権限と財政負担の均衡などの観点から「広域連合制度」を導入した場合の検討を行います。
5. 市町村合併の対応については、次の通り取り組みます。
ア「自治労各県本部市町村合併対策委員会」の取り組みに参画できるよう自治労各県本部に要請するとともに、合併協議会や各自治体当局に意見反映を行います。
イ 既存単協周辺に「市町村合併の対象となる」消防本部がある場合、合併を契機として既存単協に及ぼす組織拡大・縮小両方の観点から「市町村合併組織対策消防本部」として選定し、組織化の取り組みを具体的に進めていくこと。
ウ 合併した新自治体および「新設合併」や「編入合併」にともない再編された一部事務組合・広域連合における消防職員協議会については、既存の単協を活用して、対象全消防本部の組織化を進めること。

〈地域安全・安心センター構想の推進〉
1.「地域安全・安心センター」構想に関して各地域の実情に応じた消防行政のあり方を、各単協で主体的に分析・検討します。
2. 住民アンケートの集計によって得られたデータなどをもとに、今、地域住民が消防行政に何を求めているのか、調査・研究します。
3. 会員をはじめ各方面から、消防行政の将来的展望について幅広い議論の素材の提供を求めます。

〈時代に対応するシステムづくり〉
1. 消防財政に関する調査研究を進めます。
2. 消防無線のデジタル化については、導入にともなう費用を、国が応分の負担をするよう求めます。
3.「消防力の基準」の中に広域応援に関する対応が明記されていない矛盾点を指摘し、財政面も含めた広域応援体制のあり方を検討します。
4. 大規模災害の発生に備え各自治体で地域防災計画の見直しが行われ、消防においても広域応援体制の整備などが推進されています。私たちは、視点を変え、「災害に強い人づくり」を進めるため、行政として何をすべきか、その担うべき役割などについて研究します。
5. 各単協においても、地域の実情に沿った消防行政の確立にむけて、次のことに取り組みます。
ア 地域の消防行政について、各県自治労・自治研センターとともに、行財政の問題点の調査・分析など地方自治・行財政の研究活動を進めます。
イ 地域の防災計画、消防行政の改善のため、住民や有識者を中心としたシンポジウムの開催を計画するなど世論の喚起に努めます。
9. 消防総合研究委員会は消防に関わる各種問題を調査・研究します。