ＪＲ列車事故救助にともなう大阪市消防職員殉職事故調査の実施と政府の対応

調査をうけての課題の整理

1.　鉄道災害に関する各消防機関と鉄道事業者との協力について

（ア）各都道府県消防本部と鉄道事業者の間での協議、（イ）消防庁として協議内容の実態把握、国土交通省との連携。（ウ）事故後に、協議内容の全国実態の把握

2.　列車事故災害時における消防職員の安全確保について

消防職員に列車停止権限の付与などを含め軌道敷地内における負傷者を安全・迅速に救助するうえでの安全確保策を講じる必要がある。

3.　再発防止に向けた対応策について

（ア）各消防本部への事故対策マニュアルなどの情報提供、（イ）鉄道・警察・消防などの関係機関との連携を強化し、恒常的な協議会を設置。

2002年11月28日民主党の高嶋良充参議院議員による参議院総務委員会質問に対する国会答弁

　事故調査後、全消協・自治労が事故原因と今後取るべき対応について課題を整理し、その内容に沿って、11月28日、民主党の高嶋良充参議院議員から、参議院総務委員会において国会質問を行われた。国会答弁は以下の通り

1. 　鉄道災害に関する各消防機関と鉄道事業者との協力について

石井隆一消防庁長官「一昨年の東京・日比谷列車事故をうけて、国土交通省と協議のうえ、昨年10月鉄道事業者に対して、鉄道災害時における消防機関との間で連絡体制を徹底するよう通達している。通達後、主要な消防本部においては、鉄道事業者との協議、訓練実施、司令室との連携がはかられているが、対応が十分でない消防本部が多いのが実態である。各消防本部に対する実態の把握と、これまでの対応の改善をはかるため指導・助言を行っていく。」

　石川裕己国土交通省鉄道局長「昨年１１月、消防本部から鉄道事業者に対し、鉄道災害時救助活動応援要請があった場合、協力して遺漏のないよう救助処置を講ずる旨通達している。また、今回の列車事故をうけて、ＪＲ西日本に対して警告書を出し、列車事故の原明と再発防止策の確立を求めている。11月11日には、鉄道事業者に対して、消防機関からの消防救助活動に関する協議対応と、安全の徹底と二次災害の再発防止等救急・救助体制について遺漏なきよう通達している。調査員を派遣して、現在調査を実施している。」

2.　列車事故災害時における消防職員の安全確保について

石井消防庁長官「消防職員に対して、鉄道災害の救助時、列車の停止権限を付与することについては、困難である。事故前にも，消防機関に対して、鉄道災害への対応として、軌道敷内における救助活動前に、鉄道事業者へ列車の運行状況を確認のうえ停止を要請するよう求めている。事故の原因究明作業を見守るとともに、各消防本部に対して、今回のような救助活動にともなう二次災害防止に関する意見を集約し、再発防止に向けた体制の構築に取り組む。」

再発防止に向けた対応策について

片山虎之助総務大臣-
「提案は１つの案であると思う。航空鉄道事故調査委員会の調査結果を踏まえて、関係者間で再発防止策の策定をお願いしたい。」

「大阪鉄道事故調査に参加して」

東海ブロック幹事　中尾寛

　「軌道敷内への立ち入りに際して、鉄道・警察・消防機関の各責任者の間で意思疎通ができていたのだろうか。」今回の事故調査団に参加して最初に抱いた感想です。実際調査を実施して克服すべき課題が何かについて、皆様に報告したいと思います。
　まず、実際調査を実施して、救助活動する消防隊員の安全を確保するうえでは、現場に到着している関係者から、列車の運行状況、送電停止等について充分情報収集できているかにつきると思います。そして、救助活動における適切な対応をはかるため、1.救助活動を支援する警戒隊員を救助現場に集結する、2.列車の停止などを想定した訓練を実施する、3.軌道敷地内における事故への対応するため、鉄道・警察・消防等関係機関による協議会を設置する。その設置により、事故防止・対応マニュアルの作成など適切な措置を講じられるよう恒常的な連携体制の整備が必要だと思います。このように事故調査結果で明らかになった課題解決に向けて、昨年11月28日の石井消防庁長官からの国会答弁で言及の通り（1月24日付発文参照）、各単協の側から、各自治体・消防本部に対して積極的な意見集約等取り組みをお願いいたします。最後に、亡くなった大阪市消防局の救助隊員のご冥福をお祈りします。