第66号

団新時代にふさわしい常備消防体制のあり方を考える

 

1.新時代にふさわしい常備消防の在り方研究会での主な論点

 2002年3月、消防庁においては「新時代にふさわしい常備消防の在り方研究会」が設置された。その中では、1.国主導による市町村合併の推進を受けての消防本部の広域再編や消防・防災などの連携などの対応などを踏まえた常備消防を中心とした消防防災体制の充実・強化、2.国・都道府県・市町村に対する通常時および大規模・特殊災害時における役割分担のあり方を中心に議論が行われ、最終報告が2002年12月24日に発表された。<詳細は、全消協・消防庁ホームページ及び全消協発2003第22号(1月24日付)参照>

2.議論を受けての国がめざす主な具体的措置(2002年10月30日、地方分権改革推進会議:事務・事業の在り方に関する意見)と自治労による新時代にふさわしい常備消防体制の在り方に関する要請時(2002年12月5日)に示した私たちからの問題提起

(1)常備消防設置義務および救急実施義務市町村の政令指定制度の見直し

<問題提起>
 消防庁においては、全国的に常備化が達成された現状を踏まえ、今後は地域事情に応じて各市町村の自主的な判断によって設置を委ねるとしている。地方分権の理念から、常備消防設置義務および救急実施義務市町村の政令指定制度の見直しに反対するものではない。しかしながら、これまでの国の常備化政策で、誕生した多くの財政力が脆弱な組合消防では、今回の指定制度の見直しにより、その存在意義が危惧される。従って、「常備消防体制」のあり方について各単協で発信し、各自治体当局へ提言することが求められている。また、自治体への税源移譲のないまま、地方分権の論理を持ち出し、指定制度見直しに固執する国の姿勢を転換させる必要がある。具体的には、各地域で「自己責任・自己決定」に基づく理想の「常備消防体制」を確立するためにも、自治労などと連携して自治体への税源移譲実現に向けた取り組みが必要である。

(2)消防力の基準の見直し

<問題提起>
  消防庁のいう「住民ニーズに立脚した機能面等からの技術基準として『消防力の基準』を構成する。」との考えについては、「消防力の基準」で示されている消防施設面が90%の整備水準、さらには、人員面においては70%に過ぎない(2000年4月1日現在)現状から、看過できない内容である。(なお、大都市と地域間格差の実態についても、自治労を通じた要請においても示されていない。)したがって、「消防力の基準」の位置づけについては、指針からナショナルミニマムとして転換するとともに、その基準に沿ったサービス提供体制の確立を通じて「市町村消防の原則」を堅持する必要がある。

(3)消防の広域再編の推進

<問題提起>
多数の消防本部の対応が必要な大規模・特殊災害時については、地域のニーズ・特性を配慮するとともに、各消防本部を補完する連携体制を強化し、迅速・効果的な対応と執行体制の明確化をはかるべきである。 また、各自治体の自主性を尊重する観点から、自治体間で協議会および機関の共同設置(地方自治法第252条)や広域連合が有する機能について十分検討すべきである。以上の内容についての前提条件としては、第一次分権改革で確認された国と地方などとの「対等・平等の原則」に基づく、地方への税財政の自主性が担保された住民本位の「自治体」を構築する基盤が整備されることである。

(4)地域の市町村以外の行政主体が消防・救急の事務を担うことができる仕組みの導入

<問題提起>
1. 市町村の責任範囲通常災害時については、市町村が費用負担とともにその対応について責任を持つべきであるが、大規模・特殊災害については、都道府県および国の費用負担に基づき、市町村が実行機関として主導的な役割を担うべきである。

2. 都道府県の責任範囲都道府県は、域内自治体において発生した大規模・特殊災害に対して迅速に対応するために、各市町村で構成する協議機関の設置など広域防災応援体制の整備と広域防災応援協定の締結を支援するとともに、その執行にかかる費用を負担する必要がある。市町村の消防責任・財政負担のみを定める現行の消防組織法は、この点についての見直しが必要である。

3. 国の責任範囲国はその責務に応じて、対応に要する人件費・資機材、日常の維持費用について財政負担を行う必要がある。以上のように通常災害と大規模特殊災害における市町村・都道府県・国の費用負担の明確化とともに、「市町村消防の原則」の観点から、出動にあたっては、通常・大規模災害の規模に関係なく、基本的に被災している各市町村が主導的な役割を担い、対応すべきである。

(5)緊急消防援助隊に対する国の役割分担の在り方

<問題提起>
1. 責任体制・権限・活動範囲
緊急消防援助隊の隊員が地域を超えて活動する場合、その責任の所在および権限の行使について明確な制度化が必要である。 緊急消防援助隊においても、あまりにも広域な範囲を受け持たせるべきではない。隣接する3〜5程度の都道府県(道内にあっては、支庁)の範囲内とするなど、市町村消防の機能を補強する観点に立った制度の整備が必要である。このように、市町村すなわち地方が実行機関として主導的な役割を担うべきである。よって、緊急消防援助隊活動にあたって、基準、基本計画を策定するとの国の方針については、再考が必要ではないか。

2. 維持・活動に関する経費負担のあり方緊急消防援助隊の活動範囲は、当該消防本部にとどまらず、さらに当該都道府県よりも広範囲にも及んでいる。したがって、この制度に係る設置・維持・活動に関する責任と費用負担は国が負うものとする必要がある。