第65号

四日市市消防職員協議会の取り組み

消防行政広域化にかかる課題

 
 地方分権、規制緩和、市町村合併等、私たちをめぐる情勢は、激しく変化しようとしています。本市においても、隣接市町との合併に向けた取り組みが行われています。消防の分野においても、大規模・特殊な災害への対応や小規模消防本部の問題が指摘され、消防の広域再編の動きが活発化し、市町村合併や広域再編をすればあたかも直面している課題が解決するかのごとく考えられていることに留意する必要があります。
 消防機関は、発生した災害への対応が主な任務です。阪神淡路大震災以降大規模災害への対応、昨年の新宿雑居ビル火災では、「消防」という行政機関の不作為責任が問われました。これを受けて消防法が改正され、消防吏員等の権限が強化されましたが、次に示す問題について検討が必要です。

1. 出動車両・人員の関係から、災害初期における大部隊の出動が困難である。

2. 大規模災害時への迅速な対応には限界がある。

3. 職員の充足率が低水準にとどまり、人員確保上の問題がある。

4. 兼務の割合が高く、複雑多様化する災害対応が困難である。

5. 職員数の制約から、予防業務の高度化・専門化に対応する人員体制が採れない。

6. 財政的な理由から、各種教育訓練機関への派遣が困難である。

 一方、市町村合併等を通じた消防行政の広域的対応が求められる中、地域住民のニーズに対応しうる消防サービスを提供できる体制を整備し、地域住民の安全を確保することが必要です。
 四日市市消防職員協議会では、「市町村合併検討会」を設置し、関係する鈴鹿市消防職員協議会と亀山市消防職員協議会と連携を図りながら基礎的データを収集してきました。そして、幾多の問題のうち何を重点課題として取り組むのか等の検討を行ってきました。

1. 消防の組織機構・署所配置等を考える場合には「地方交付税基準財政需要額」及び「消防力の基準」をベースとし、各地域の実情に見合った消防勢力の配置を考慮する必要があること。

2. 消防責任を果たすための政策課題・行政管理課題を認識しつつ、消防組織として関与し解決できうる課題を優先すること。

3. 地域内の消防需要の動向、消防力の実情、消防本部の業務運営、財政、人事管理等の状況、消防サービス水準の相違等問題点を十分に分析し認識すること。

4. 諸課題を合併までに取り組むべき事項、合併後において対応すべき課題に区分して取り組むこと。

 今後も市町村合併などの広域再編を控えて、以上の課題について検討する一方、その事態が間近に迫った時、問題を先送りせず課題解決に向けて主体的に対応策を職場・当局・社会に示すことが協議会の存在意義であると考えます。

[解説]

 総務省消防庁の消防広域化基本計画の見直し(平成13年3月30日)では、全国の大多数を占める小規模消防本部における消防需要の質的・量的拡大への対応をはかるうえで、財政基盤や人員、施設装備の不十分さが課題であると指摘されている。その解決策として、消防本部の規模拡大・広域再編の必要性が示されるとともに、その広域再編の手法として、市町村合併による迅速な意思決定、事業実施が最も効果的であるとしている。 一方、既存の自治体の変更を伴わない一部事務組合や広域連合などは、自治体間の連絡調整に時間を要するなど迅速・的確な意思決定ができないとしている。
 同時に、合併後の人口規模など関係から小規模消防本部の広域再編は、市町村合併のみではなく、一部事務組合や広域連合の組み合わせが適当であるという指摘もされている。
 なお、総務省消防庁に3月設置された消防体制の今後の基本的方向性を検討する新時代にふさわしい常備消防体制の在り方研究会では、共同処理方式(一部事務組合や事務委託、広域連合)による広域化の推進について指摘している。

(指摘事項については、下記の対応方策・考え方参照)

市町村合併の動きを座視するのでなく、日頃の単協活動を通じて、地域に根差した基礎的自治体の適性規模や担うべき役割、既存の一部事務組合や広域連合の活用による各自治体間の連携の在り方に関する検証と提言を職場や社会へ発信する必要があるのではないか。

【対応方策・考え方】

「新時代にふさわしい常備消防体制の在り方研究会」中間報告より

(1)共同処理方式を活用した広域化の推進

 一部事務組合や広域連合、事務委託の制度の活用による共同処理については、前述のような問題のおそれはあるものの、適正な規模・態様の消防本部体制の実現の一手法として、消防事務の効率的・効果的な遂行、消防防災機能の高度化という面で、なお有用である。今後とも、地域における総合的な消防防災体制が確立されるよう、一部事務組合等と市町村との間で、運営・責任体制を充実強化することはもとより、大規模震災対応等で重要となる防災行政との連携に留意しつつ、共同処理方式を活用した広域化を推進していく必要がある。

(2) 市町村合併の推進に対応した広域再編の取り組み

市町村合併は、各地域の様々な事情を斟酌しながら、各地域の自主的な判断の下に、推進が図られているところであり、消防事務においても、広域化に加え、緊急時における意思決定の迅速性や大規模災害等に係る明確な責任体制が確保されるなどの効果が期待される。このため、消防事務の側でも市町村合併の推進の動きと歩を一にした広域再編の取り組みが求められる。

(3)市町村合併と共同処理方式の総合的な活用

広域化を進めるにあたって、市町村合併の効果と一部事務組合や広域連合、事務委託による共同処理方式の効果は、それぞれ異なっており、総合的な活用に努めていくべきである。この一環として、市町村合併によっても、消防事務について、適正な態様・規模になおいたらないときには、合併後の市町村を単位として、2以上の市町村による共同処理を図ることを検討すべきである。

 その際、都道府県が策定している消防広域化基本計画に基づき、市町村合併の効果を踏まえたさらなる広域処理体制が構築できるよう、国や都道府県において、助言や支援に努める必要がある。