第63号

ILO・PSI訪問、ヨーロッパ消防行政実態調査を終えて

 私たち全消協ILO(国際労働機関)・PSI(国際公務労連)訪問、ヨーロッパ消防行政実態調査派遣団は、2月28日から3月10日までスイス・ジュネーブのILO本部、フランスのPSI本部、それとフランス・ミュールズ(ドイツ、フランス、スイス3ヶ国の国境近くの街)、イギリス・キングスビレッジ(ロンドンの南部)、ドイツ・ベルリンにおいて労働組合活動が活発な消防職場への訪問、調査をする機会を得た。
 
 2月28日、26日に連合とPSIをはじめ国際労働組合組織が「今回の公務員制度改革が結社の自由及びILOの諸原則に違反する」としてILO結社の自由委員会へ提訴したとの知らせを受けての出発となった。
  訪問目的の一つは、2003年度のILO総会・条約勧告適用委員会で再度消防職員の団結権について協議されるよう協力要請するとともに、その実態を報告することであった。一つは、団結権を持った欧州の消防職員の労働条件及び組合活動を調査することであった。3月1日水曜日にジュネーブILO本部・結社の自由部長室において、ジェルニゴン結社の自由部部長とカレン・カーチス結社の自由部課長(87号条約専門員)と面談する機会を得た。その中で、私たちは消防職員の団結権問題の現状、消防職員委員会の問題点を情報提供した。ジェルニゴン部長からは2003年のILO総会に向けて、私たちが何をすべきかのアドバイスをいただいた。具体的には、1.将来の団結権保障を視野に入れて95年に消防職員委員会制度の設置に合意しながら、未だに団結権保障のための法改正はなく、また制度自体、消防職員の団結権保障に繋がるようなものでないと訴えること。2.専門家委員会のメンバーに対して、協議会に対する不当な圧力や、嫌がらせなど権利侵害の具体的事例を示して、基本的人権に抵触することを訴えることである。
  帰国後早速私たちは、連合が今回の提訴にともない、ILOに提出した追加情報の中に自治労を通じて追加資料として意見反映した。
PSIには同日訪問、エンゲルベルツ書記長との面談。これまでの取り組みの経過説明とILO対策への支援・協力を要請した。
  その中で、日本の消防職員を含めた公務員の労働基本権が制約されることのアジア諸国に与える影響についての説明をうけ、私たちが担うべき責任の重さを再認識した。また来年1月にILOで自然災害時、緊急に従事しなければならない労働者を対象に労働者の権利に関する会議を開催する予定との紹介があった。(この種の会議は1990年の消防職員の雇用と労働条件の合同会議以来。その際消防職員の団結権問題の決議を採択)その中で、「1月の会議の中で日本政府のこの間の団結権問題に関する対応を追求することが可能である。」との助言をいただいた。
 ヨーロッパ調査は、紙面都合上ILO・PSI訪問と併せて報告書を作成し、別途報告させていただく。
 最後に今回初めて全消協が独自に国際機関、国際組織を訪問した。(日本の消防の情報も限られている。)私たちは、日本の消防職員の団結権問題はILOでは認知されている一方、ヨーロッパの消防職場では全く知られていない事実を重く受け止め、唯一日本の消防職員を代表する組織として、他の消防組織と交流を深める必要性を再認識した。交流を通じて団結権獲得のための国際世論の形成と、団結権を保障されて当然といわれる程度のヨーロッパの消防並みの高いステイタスを確立し国内世論を形成することが団結権問題を解決するうえで不可欠である。また、消防行政改善への提言とそれが行える職場にするための組織拡大も団結権獲得同様取り組みを強化しなければならないと決意を新たにした。
 最後に今回の訪問調査にあたり、自治労本部組織局、国際局特に八木書記・窪田書記、PSI本部三井さん、ベロニカさん、そして各国の消防職場、労働組合関係者の皆様には準備段階で大変なご助力をいただきました。改めてこの場を借りまして感謝の意を表します。