1. 消防職員委員会の上手な運営

消防職員委員会設置10年目に制度改正へ

■ これまでの状況

 消防職員委員会制度がすべての消防本部に設置され10年が経過しました。全消協はこれまで組織を挙げてこの制度を有効活用し、民主的な職場作りに取り組んできました。しかし、消防当局による恣意的な運用や制度的な限界が露呈するなど形骸化している委員会が多く存在することが実態調査により明らかになっていました。また、この調査結果を基に「委員会の民主的運営には団結権が必要不可欠である」として、自治労・連合の協力により2002年ILO総会に提訴し、2度にわたるILO勧告を導き出していました。(年ILO総会開催予定)


■ 消防職員委員会懇談会の設置 自治労・全消協プロジェクト組み対応

 2004年10月自治労人見委員長と麻生総務大臣の定期協議の場において、実務者レベルの検討会=消防職員委員会懇談会が設置され、自治労(山口労働局長・松永組織局長が代表を務める)と、総務省消防庁・公務員課の間で、検証作業を進めることとなりました。これを受け、自治労と全消協はプロジェクトを組み事前協議、および全国の消防本部を対象とした調査を実施し、実態を把握するとともに、問題点を抽出し対応を行いました。
 この消防職員委員会懇談会は2004年11月25日に第1回懇談会が開催され、2005年3月15日まで5回開催されています。
 まず、総務省消防庁の調査に基づく「消防職員委員会の運営状況の説明と、これに対する意見交換からはじまり、消防職員からのヒアリング、自治労の実施した「消防職員委員会の実態調査」の結果報告と調査により抽出された制度の課題と問題点について意見交換を行い、これまでの課題について論点整理を行いました。そして、具体的な改善策「消防職員委員会制度の検証結果を踏まえた措置について」が総務省消防庁から示され、実務的な対応については自治労とも協議をしていきたいと回答しました。懇談会の最後に山口労働局長は、「この懇談会が有効かつ有意義なものと評価するとともに、関係者の努力に敬意を表したい。一方、改善案の実施により、消防職員の団結権問題に係る立場、現状と団結権付与との距離、総務大臣と自治労委員長との定期協議による議論の継続に変更はないことを相互に確認しておきたい。」と、総括的に見解を述べ、これに対し松永公務員課長は、「ご指摘の点について当方の考え方に変わりはないが、いずれにせよ、今回の消防職員委員会についての措置を円滑に実施していくことが重要であり、そのためにお互いに努力していくことが必要であるとかんがえている。」と見解を表明し、5回にわたった懇談会は終了しました。
 また、第2回懇談会の場に消防労働者の代表として全消協及び川崎市消防職員協議会が公式にヒアリングを受けたことは、これまで活動を続けてきたなかで、画期的なことでした。


■ 消防職員委員会の改正・委員会の手引の有効活用

 結果、2005年5月9日、「消防職員委員会の組織及び運営の基準の一部改正等について(8月施行)」が通知されました。
 今回の告示改正では、その趣旨として、予算編成作業を勘案したものや委員会の公正性・透明性をより向上させるもの、同一意見を再度審議する道を開くなど、意義ある成果を得られましたが、この制度を活用する私たちが十分制度を理解・研究することが重要です。全消協ではこれまでの「消防職員委員会の手引」を今回の改正に伴い新しく刷新しました。単協での学習会や未組織との交流に役立ててください。

 全消協は、今回の改正を契機に、消防職場全体の民主化、消防職員の意思疎通の円滑化をはかる中で職場勤務条件の改善をさらに進めるとともに、自治労と連携し自主組織づくり・組織拡大を全力で推し進めます。
 また、今回改正された内容を含め、各単協において職員委員会制度を新たに研究し、その活用について創意工夫することも大切です。この状況を受けて、全消協では「消防職員委員会の手引き」を2005年7月に改訂しました。この「手引き」を有効活用し、未組織職場との学習会資料としてお役立てください。


■ 改正のポイントと取り組みの方向性

今回改正のポイント

  1. 職員委員会の開催は複数回開催が可能であること

      今回の告示改正で「毎年度前半に1回開催することを常例とするとともに、必要に応じ、開催する」こととしました。まず、年度前半の常例開催としたのは、次年度の予算編成作業に対応した開催を考慮したもの。さらに、「必要に応じ開催」を告示で明記したことを踏まえ、例えば首長による予算査定期、自治体議会での次年度予算確定期に向け、職員委員会の開催を要求していく必要があります。これにより、職員からの提出意見の実現を迫ります。


  2. 審議結果等の周知は、その理由を含め職員全員に対し義務づけたこと

     この職員全員に対する情報提供義務は、職員委員会の公正・透明性を確保する上で重要という趣旨から同様に告示で明記したものです。このことは、今回通知で「再度意見提出は可能」とする途を開いたことから見れば、出来る限り文書で徹底する必要があります。


  3. 「意見取りまとめ者」の創設は、委員会機能の活性化と単協活動の要となること

     「意見取りまとめ者」の役割は、委員と同様に職員の声を反映していく上で大きいものです。その担う事柄は、概要次のとおりです。

    職員の意見を集約し、すぐに解決可能なもの・予算措置が必要なもの・長期的に解決すべき課題など整理し意見提出すること
    提出意見を委員会事務局が勝手に審議対象外としないなど折衝すること
    職員からの提出意見は、原則として「意見取りまとめ者」名で提出すること
    審議事項にのせた意見を委員会が拙速に「現行どおり」「実施困難」と結論づけないよう、十分な補足説明を行うこと
    委員会の運用面(開催要請など)で積極的意見を述べ、また必要と思われる職員からの提出意見に関して再審議を要請すること、などです。

■ 消防職員委員会に関する質疑応答例

(意見取りまとめ者の設置)

問1  消防職員委員会の組織及び運営の基準の一部改正(平成17年消防庁告示第6号)により、意見取りまとめ者を設置することとされたが、意見取りまとめ者は必ず置かなければならないのか。
答1 必ず置かなければならない。
 意見取りまとめ者は、委員会の効果的かつ円滑な運営を図るため、職員から提出された意見を取りまとめて委員会に提出するほか、委員会の運用に関する意見を述べることを可能とする仕組みとして創設された趣旨にかんがみ、各消防本部においては、意見取りまとめ者をおく必要があると考える。

(意見取りまとめ者の定数の趣旨)

問2  意見取りまとめ者は、標準的な規模の消防本部及び消防署の組織において4人とすることを基本とするとされているが、その趣旨は何か。
答2  標準的な規模の消防本部及び消防署の組織における委員の定数を8人とすることを基本としていることにかんがみ、その場合の意見取りまとめ者の定数をその半数とすることを基本とするものである。

(意見取りまとめ者の指名)

問3  意見取りまとめ者を指名する際には、どのような方法で行えばよいか。
答3  消防長が誰を指名したかが明らかになれば適宜の方法によって差し支えないが、一般的には書面(辞令)によることが適当である。

(職員による推薦の方法)

問4  職員による意見取りまとめ者の推薦は、どのように行えばよいか。
答4  職員による意見取りまとめ者の推薦は、職員の話し合い等適宜の方法により行うものである。

(意見取りまとめ者の任期)

問5  意見取りまとめ者の推薦・指名を組織区分ごとに行っている消防本部において、意見取りまとめ者に指名されていた職員が組織区分を越えて異動し、これまでと異なった組織区分から意見取りまとめ者として指名されるような場合にも、両方の任期を通算して引き続き2期を超えて在任することはできないことになるのか。
答5  異なった組織区分における指名であっても、通算して引き続き2期を超えて在任することはできない。

(意見取りまとめ者と委員の兼任)

問6  意見取りまとめ者は、委員と兼任できないものとされているが、その理由如何。
答6  委員は、消防職員としての知識、経験に基づき、公平公正な立場から提出された意見を審議する任に当たるのに対し、意見取りまとめ者は、職員側の立場から意見を取りまとめて提出するほか、委員会制度の運用に関する意見を述べるなどの役割を果たすものである。このように双方の立場・役割が異なることから兼任できないこととしたものである。

(意見取りまとめ者の行うこと)

問7  意見取りまとめ者は、職員からの意見の取りまとめや取りまとめた意見の委員会への提出等を職務として行うのか。
答7  意見取りまとめ者は、それらを職務として行うものであり、原則として勤務時間中に行うこととする。

(意見取りまとめ者の委員会への出席)

問8  意見取りまとめ者は、委員会に出席し、提出意見についての補足説明などを行うことができるか。
答8  意見取りまとめ者は、答6のとおり委員会の委員ではないことから、委員会に出席して説明を行い、又は意見を述べる等、委員会の審議に参加することはできない。

(意見取りまとめ者の意見)

問9  意見取りまとめ者は、委員会に対し、委員会制度の目的の達成に資するよう当該制度の運用に関し意見を述べることができるとされているが、具体的にはどのような意見を述べることができるのか。
答9  例えば、意見の募集方法に関する意見、意見を提出しやすい環境づくりについての意見、委員会の開催時期や開催に係る周知についての意見、審議概要の周知方法についての意見など、委員会の効果的かつ円滑な運営の実現のために必要な意見を述べることができる。

(提出された意見の取扱い)

問10  職員の意見は、委員会の庶務を所掌する部課を通じて委員会に提出されるところであるが、その取扱いにつき留意すべき点は何か。
答10  委員会の庶務を所掌する部課にあっては、職員からの意見の提出を受けるに当たり、当該意見を取りまとめた意見取りまとめ者(意見取りまとめ者を経由せず直接意見を提出する場合にあっては当該意見を提出する職員)に、当該意見の趣旨(意見取りまとめ者が当該意見に関する補足説明を行い、又は委員会制度の運用に関し意見を述べる場合にあっては、これらの趣旨を含む。)をよく確認するなど、その意向を十分に汲み取るよう配意することが適当である。
なお、意見の提出の際に意見取りまとめ者が補足説明を行った場合において、当該意見に係る委員会の審議の際には、当該補足説明の内容を併せて審議の用に供することが適当である。また、意見の提出の際に意見取りまとめ者が委員会制度の運用に関する意見を述べた場合において、当該運用に関する意見についても、今回の趣旨にかんがみ、できるだけ広く委員会の議題とすることが望ましい。

(意見取りまとめ者間の意見交換・意見の共同提出)

問11  意見取りまとめ者は、取りまとめた意見について、他の意見取りまとめ者と意見交換することは可能か。また、取りまとめた意見を委員会に提出する際に、他の意見取りまとめ者と共同して提出することは可能か。
答11  いずれも可能とする。
なお、意見を提出した職員の氏名等については、プライバシー保護の観点から、意見取りまとめ者間においても明らかにしないこととする取り扱いが適当である。

(委員会の会議)

問12  委員会の会議は、毎年度の前半に1回開催することを常例とするとは、どのような意味か。また、必要に応じ開催するとはどのような意味か。
答12  「常例」とは「通常の例」という意味であり、制度の趣旨にかんがみ、意見提出の有無に関わらず、少なくとも毎年度の前半に1回は開催することが必要である。また、「必要に応じて開催する」とは、これまでも質疑応答等により周知してきたところであるが、必要がある場合には、毎年度1回の開催に限ることなく、複数回の開催も可能である旨を告示上明文化したものである。

(審議結果の通知)

問13  意見を提出した職員及び意見取りまとめ者に対し、当該意見を審議の対象とするか否かの取り扱いを通知する、並びに当該意見の委員会での審議結果及び当該結果に至った理由を通知するとあるが、その通知についてはどのような方法によるべきか。
答13  各消防本部の実情に応じて、本人への通知文書、電子メールなど、意見を提出した職員及び意見取りまとめ者に確実に伝えることができる適宜の方法によられたい。

(その他)

問14  今回の告示は、平成17年8月1日から施行されるが、平成17年度についても年度前半に委員会を開催しなければならないか。
答14  予算編成作業を勘案して毎年度前半に委員会を開催することとする今回の改正の趣旨にかんがみ、平成17年度においても、毎年度前半に委員会を開催することが適当である。
問15  平成17年度の委員会を8月1日より前に開催した場合、意見取りまとめ者の指名は次回の委員の選出時期まで行わなくて良いのか。
答15  意見取りまとめ者を創設した趣旨にかんがみ、8月1日の施行以降速やかに意見取りまとめ者を指名することが必要である。したがって、次回の委員の選出時期まで指名を行わないとすることは不適当であり、すでに今年度の委員会を開催済みの消防本部においても速やかに意見取りまとめ者を指名すること。